物事を考えるときに、買い手側の論理で思考するためのヒントがある。知識を身につけると同時に、実践してこそはじめて読了する一冊。複数人で検討する際にこそチカラを発揮すると感じた。
最強のWebコミュニケーションシナリオ お客さまとの絆をつくるインサイトマーケティング 濱川 智 日経BP社 2007-10-18 |
最強のWebコミュニケーションシナリオ お客さまとの絆をつくるインサイトマーケティング
濱川 智
「売れそうなサービス」を一生懸命つくるのではなく、「こんなサービスを待っていた」と言われるサービスをつくること、「売るための方法」ではなく、「ほしいと言わせる方法」と、「売るためのセリフ」ではなく「買うための動機」をつくることが、プロジェクトを成功させるためのもっとも確実な条件です。
大きく23つの視点があってそれぞれのテーマや目的となるものが明確になりました。サービス視点の「お客さまの共感を獲得する」ことと、プロジェクトマネジメント視点の「明確なシナリオと根拠を持つ」こと、この2つがプロジェクト全体を貫くテーマであり、一致団結して取り組まなければならない目的であるということです。
ニーズとは「必要性を感じる」という意味です。
インサイトとは--お客さまの共感を呼び起こす「心のスイッチ」
「わたしのユーザモデル」を「ゴムのユーザ」と呼びます。
電話のプロは、そうした失敗をしないように、また確実にお客さまの共感を獲得して、お客さまに満足してもらうために
1. 相手のテンポに合わせ
2. 相手に考えさせずに
3. 相手の課題を解決するために話を聞く
4. 相手に確実に伝える
という基本技術があるそうです。(「電話王の話す技術・聞く技術」斉藤ますみ著)
実際のお客さまに検証してもらう、事実ベースの評価手法なので非常に高い効果が得られます。
ヤコブ・ニールセンは、「5人のユーザーでユーザーテスティングを行えばWebサイトが抱えている課題の、およそ85%が発見できる」と解説しているほどです。
(ユニバーサルデザインでは)はじめから製品のビジネスターゲットとなるうる人たちにとって望ましいモノ、共感を呼び起こすモノを生み出すことを目的としているのです。
従来からビジネスターゲットとなっていたボリュームゾーンの平均的なユーザー以外にも、お客さまが存在することを理解し、そのお客さまの共感を呼び起こし、絆をつくるためのプロセスがユニバーサルデザインの本質なのです。
ペルソナを端的に説明すると、ビジネスターゲット層の典型的なユーザーモデル(想定顧客像)を具現化する、非常に精緻な「疑似人格」です。
「コンセンサスとは全員一致の決定」ということです。
「プロジェクトを成功に導く役割を持つ人」に優先順位をつけてペルソナに設定するのです。ペルソナを使うということは、ビジネスターゲット「層」の不特定多数に平均的なサービスを設計する戦略から、一番大切なお客さまに対して最適なサービスを設計する戦略にシフトするということなのです。
プロジェクトの決めごと
目的―プロジェクトの目的を明確に定義します。できるだけ短い言葉にすることがポイントです。メンバー全員が明確に同じ言葉で語れるようになることがベストです。
目標―測定可能な指標です。プロジェクトの成果指標を明確にすることで、検証することが可能になります。この指標を明確にすることで、成功したのか失敗したのかがわかります。
範囲―次はどこまでやるのかを明確にしましょう。既存Webサイト全体が対象なのか、指定ドメインだけが対象なのか、サービス開発だけなのか、サービスの販売まで含むのか、そうした範囲を明確にします。この作業を怠ると、お互いがあいまいな線引きによって苦労してしまう不幸なシナリオとなってしまうので注意しましょう。
期限―詳細なスケジュールは後回しでもかまいません。いつまでに終了させなければならないプロジェクトなのかを明確にします。確保しなければならないリソースが明確になります。
予算―「何を、どこまで、いつまでに」ときたら、それを「いくらで」やるのか決めましょう。
対象―ここまで一貫して重要性を指摘している「誰に」対してのプロジェクトなのかを明確にします。対象についてはあいまいになりがちです。
(* 略したり、書き換えたので、厳密な引用ではありません)
これら3つの要素(コスト・納期・クオリティ)は、それぞれがトレードオフの関係にありますので、これらの優先順位を明確にしておかないと、どれかひとつでも犠牲になりそうなときに、取り返しのつかない問題に発展してしまうことになります。
ペルソナづくりで重要なのは先に述べたとおり全員のコンセンサスを得ることと、優先順位を明確にすることです。1人の典型的なユーザーモデルを採用することに対するコンセンサスを得るために、まずは消費者の視点から戦略を練るという方針に合意してもらうことからはじめましょう。
インサイトマーケティングは「どうやれば売れるか」という方法を考えるのではなく「それがほしかったんだ」「そんなサービスを待っていた」とお客さまに言わせる方法を考えることです。企業の論理ではなく、お客さまの視点や心理からコミュニケーションの方法を考えるので、企業にとっては満足だけれど、消費者にとっては不条理といったサービスになる心配がありません。
インサイトは心の奥底にある本人すら気がつかない潜在的な心理の場合もあり、発見するのは容易ではありません。
コミュニケーションシナリオ「DHIPS」
Desing/定義:「誰のためのサービス」なのか明確にする
Humanization/人間化:「ペルソナ」とコミュニケーションする
Insight/理解:お客さまの「インサイト」を発見する
Proposition/提案:お客さまの共感を獲得する「仕組み」をつくる
Solution/提案
「売れそうなものをつくる」のではなく「お客さまがほしがるものをつくる」、「売り文句を考える」のではなく「売ってくれと言ってもらう」方法を考える。